2022年4月5日火曜日

米アマゾンでの労働組合結成(兵頭淳史代表理事)

 

 発生から2年が経過してなお収束しないCOVID-19パンデミックと、ロシア・ウクライナの戦争が、世界のニュースを席捲し続けていますが、そんななか、労働の世界において注目すべきニュースがアメリカから飛び込んできました。米国発の多国籍通販企業アマゾンの米国内事業所で初めて労働組合が結成されたというニュースです。

 4月1日、ニューヨーク市スタテン島のアマゾン物流拠点JFK8で、組合承認の是非を問う投票の結果、賛成多数で組合結成が承認されました。これにより、米国内のアマゾンに初めて団体交渉権をもつ労働組合(Amazon Labor Union)が生まれることになったのです[1]

  アメリカでは原則として、全米労働関係委員会の管理の下で、当該事業所で働く労働者による投票が行われ、その結果過半数の支持を得ることができなければ、団体交渉権をもつ労働組合は存在できない制度になっています。そして、アマゾンのような有名企業も含め、少なからぬ企業の経営陣は徹底した反労働組合姿勢をとっており、その企業で労働組合結成の動きが起これば、この組合承認選挙で反対票が上回るよう様々な対抗策を講じます。アメリカの労働組合組織率が非常に低い(10%程度)のは、事業所に労働組合を結成しようとする動きの前に立ち塞がる、こうした制度的な壁と、経営者の反組合姿勢の現れとも言えます。どんな少人数でも団体交渉権をもつ労働組合を結成することができ、経営者は、極少数のからなる労働組合であっても団体交渉に誠実に応じる義務が生じる日本との大きな違いです。他方で、アメリカの労働組合が、日本の労働組合と比較したときなど、非常に活発で戦闘的なのは、このような厚く高い壁を乗り越え結成されるというプロセスとも関係するのかもしれません。

いずれにせよ、新自由主義的グローバリズムの象徴であり、現代的低労働条件・不安定就労の象徴でもあるアマゾンの「本家」において戦闘的な労働組合が出現したことの、全米、そして世界へのインパクトはきわめて大きいと言えるでしょう。米国アマゾンにおける労使関係の今後には大いに注目したいところです。

そして同時に、私たちは自らの足元・日本においても、この市場を席巻する「便利な」巨大物流拠点で働く人たちの状況にあらためて目を向けてゆく必要があります。この国でも、彼/彼女らこそ、労働組合や労働相談を通じた問題解決や条件引き上げを、客観的には最も切実に必要としている労働者であろうと思われるからです[2]



[1] ただし、44日付の報道では、アマゾン経営者はこの投票結果について異議を申し立てる意向とのことであり、正式な組合承認はこの異議申し立てが却下された後になる可能性がある。

[2] 横田増生『潜入ルポ アマゾン・ドット・コム』朝日文庫、2010年など参照。

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