Y弁護士:声の大きい弁護士。最近,ベルトの上にふてぶてしく乗ったお肉と闘うべく,筋トレらしき運動をしている。
F:Y弁護士の中学校時代の友人。現在,育休中。
F:Y弁護士の中学校時代の友人。現在,育休中。
川崎の某居酒屋にて。
F「美味しいな」
Y「でしょ。ここは,野菜炒めとお刺身とお酒が美味しいんだよ。もぐもぐ……」
F「中学の頃と比べて,太ったよな?」
Y「うぐっ。……でも,身長も伸びてるんだよ」
F「ふーん,それで何センチ伸びたの?」
Y「……5㎝くらい……はい,すいません,間違いなく太りました」
F「まぁ,そんな君のベルトの上にふてぶてしく乗っているお肉事情なんかどうでもいいけど,ちょっと,相談したいことがあるんだけどいいかい?」
Y「なんだい?」
F「今,俺,育休中なんだけど,上司からLINEで『君は,男性なのに育休を取った上,その期間も長いし,今後のキャリアアップを考えたら辞めた方がいいと思うんだけど』っていうメッセージが送られてきたんだ」
Y「ほう」
F「それで,『辞める気はありません』って返信したら,数日後,突然会社から,手紙が届いて,『貴殿の行為は懲戒事由に該当する』ので,2015年4月27日付で,懲戒解雇する』と書いてある文書が届いたんだ」
Y「どんな行為が懲戒事由にあたるって書いてあったの?」
F「無断欠勤が2回あったことが懲戒事由にあたるって書いてあったけど」
Y「実際に,そんなことはあった?」
F「2回休んだことがあったけれど,どちらも事前に会社に連絡したよ。1回目は,母が急に倒れてしまって救急車で運ばれてしまったので休む旨,2回目は,食あたりで病院へ行くので休む旨,説明したよ」
Y「休んだことで,会社から処分とか注意とか受けた?」
F「いや全く」
Y「それはいつの話?」
F「もう5年も前のことだよ」
Y「他に何か書いてあった?」
F「『貴殿は,育休を長く取得していることもあり,貴殿の自主的な退職を求めましたが,受け入れてもらえなかったので』ということも書いてあった」
Y「F以外の人も,育休取ると懲戒解雇されていたの?」
F「あー,今言われてみると,同期が産休,育休を取得したら,育休明けと同時に懲戒解雇されていたな。後輩も,育休取得したら,退職を求められたって言っていたけど,やっぱりこれってなんか変だよね。」
Y「そうだね」
F「そもそも,俺のミスって,懲戒解雇されちゃうほどのものなの?」
Y「いや,結論からいえば,解雇は無効になる可能性が高いね」
F「それは,どういう理屈なの?」
Y「育児介護休業法って聞いたことあるよね?」
F「聞いたことはある」
Y「これは,『育児休業及び介護休業に関する制度並びに子の看護休暇及び介護休暇に関する制度を設けるとともに,子の養育及び家族の介護を容易にするため所定労働時間等に関し事業主が講ずべき措置を定めるほか,この養育又は家族の介護を行う労働者等に対する支援措置を講ずることに等により,子の養育又は家族の介護を行う労働者等の雇用の継続及び再就職の促進を図り,もってこれらの者の職業生活と家庭生活との両立に寄与することを通じて,これらの者の福祉の増進を図り,あわせて経済及び社会の発展に資することを目的とする』という法律なんだよね。同法10条では,『事業主は,労働者が育児休業申出をし,又は育児休業をしたことを理由として,当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない』と定めているんだよ。」
F「今回の場合の解雇は,この10条に反するということ?」
Y「そう」
F「これに違反した解雇はどうなるの?」
Y「無効となるんだよ」
F「でも,会社は,懲戒解雇って言っているけれど?」
Y「仮に,育児介護休業法10条違反に該当する事実がなかったとしても,今回の懲戒解雇も無効である可能性が高いね。懲戒解雇といえども,自由にできるわけではなく,労契法15条によれば,懲戒事由,懲戒の種類・程度が就業規則に明記されていなければならない上,労働者の行為が就業規則上の懲戒事由に該当し,それが『客観的に合理的理由』であって,『社会通念上相当』と認められる場合でなければ,無効となるんだよ。今回の場合,そもそも就業規則に懲戒事由がきちんと定められているかという問題がある上,懲戒事由に該当する行為もなかったようだし。仮にあったとしても,懲戒解雇をするほどの相当性もないよね」
F「なるほど」
Y「実態として,懲戒解雇を装った,育休を取得したことによる解雇だね」
F「闘って解雇を撤回させたい……んだけど,お金が続くか不安なんだよね」
Y「相手方の出方とこちらの希望次第だけど,労働契約上の権利を有する地位を仮に定める『地位保全仮処分』と賃金の仮払いを求める『賃金仮払い仮処分』を申し立てる方法,労働審判手続の利用などの方法が考えられるね。他にも,雇用保険から基本手当を仮に支給される『仮給付』の申請などが考えられるけど,本件だと,会社が懲戒解雇だと言っているので,仮給付だと3か月の給付制限に引っかかる可能性があるけど。」
F「いろいろな方法があるんだね」
Y「今度,事務所で相談に乗るよ。ところで……」
F「なんだい?」
Y「なぞかけを思いついたんだ」
F「藪から棒になんだい。まぁ,言ってみなよ」
Y「昔ヤンチャだったおじいさんと掛けまして,労働者側弁護士に訴訟を起こされたブラック企業と説く。その心は?」
F「……わからん」
Y「どちらも回顧/解雇して後悔します」
F「……回顧と後悔って若干意味被っていない?」
Y「……」
つづく
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